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ビットコインは本物の通貨になれるのか ?

Is Bitcoin a Real Currency? An economic appraisal (David Yermack 2013)
の第3章 通貨としてのビットコインの弱点 (III. Bitcoin’s weaknesses as a currency) を要約

紹介する論文はあくまで2013年時点における主張であり、これらの主張が現在どのように改善されつつあるか、また現在も変わらず問題のままであるかという視点で読んでいただければ幸いである。

要旨

近年急速に広まっているビットコインに関して、法定通貨のような従来の金融商品と比較して、ビットコインの価格がどのような変動を見せるのか調査した。ビットコインは法定通貨よりも大きいボラティリティを持ち、 価値尺度や価値保存といったビットコインに望まれている機能を損なうことになっている。ビットコインの交換レートは法定通貨のレートとの相関が全く見られず、ビットコインを為替取引のリスクヘッジとしての使うことも望めない。ビットコインは常にハッキングや盗難のリスクにさらされているが、保険のある銀行システムは無く、法的な保護もないためクレジットやローンで使われることはない。結論として、ビットコインの価格は通貨というよりは投機的バブルのような動きであると考えられる。

何故ビットコインが従来の通貨としての性質を満たさないのか

ここでは、何故ビットコインが従来の通貨としての性質を満たさないのかを説明しようと思う。従来の通貨は、交換の媒介・価値の尺度・価値の保存の役割を満たしているが、ビットコインは果たしてこれらの機能を持っているのだろうか。

A. 交換の媒介
金貨などと異なりビットコイン自身には本来的な価値はないため、その価値は通貨としての有用性によって決定される。blockchain.infoによると、最近のビットコインの取引回数は約70,000に達してる。 しかし、これらの多くは投機的な投資家間のビットコインの送金であり、商品やサービスの購入には少数であることはよく知られている。

Coinbaseの共同設立者であるFred Ershamは、2014年3月のインタビューで、Coinbaseの取引の80%が投機的なものであると推定している。この見積もりが正しいとすると、1日15,000回ビットコインによって商品やサービスが購入されている。 世界に70億人いる消費者のほとんどが毎日のように経済活動をしていることを考えると、市場におけるビットコインの存在感は無視できるほど限られたものであることが分かるだろう。

広く利用される交換媒体になることの障害の一つは、ビットコインを新たに入手することに伴う諸々の困難にもある。マイニングしない限り(大規模な設備投資を必要とする)、取引所や販売所からビットコインを購入し、安全に保管する方法を見つける必要がある。しかし、通常、クレジットカードやPayPalで購入することはできず、銀行振込または銀行口座を取引所にリンクさせる必要がある。また既存のビットコイン取引は多くの場合、流動性が低く、スプレッドも大きく、動作や保管にリスクがあることも問題である。

加えて、商品やサービスを購入する前にビットコインを所持していなければいけないことも障害となる。 私たちはクレジットカードを利用することで、現金を手にせずに商品を購入することを日常的に行っている。ビットコインが使えるクレジットカードなど未だ無く、ビットコインによるローンも存在していない。

B. 価値の尺度
通貨が価値の尺度として機能するには、価格を比較するときの数値的な基準として扱われる必要がある。例えば、あるカフェのコーヒーが4ドルだったとき、別のカフェで2ドルで売っているコーヒーの2倍高いとすぐ分かる、といったようにである。

ビットコインが価値の尺度になるには問題がいくつもある。その一つは極端なボラティリティの高さであり、これについては後述する。既存の通貨と比較してビットコインは日々激しく変化するため、ビットコインを受け入れた販売店は価格を頻繁に計算し直さなければならず、コストが掛かる上に消費者を混乱させることにもなる。ビットコインを主要な通貨とした経済圏ではこの問題は起こらないが、現在のところ存在しない。

関連した問題として「現在のビットコイン価格」が不揃いなことも挙げられる。今、最も取引高の多い5つの取引所間でも7%近い価格差もある。このように市場価格が不確実であるために、ビットコインの価格を複数の取引所の24時間の平均取引額などで表現しているが、これらの価格はその時点の本当の価格を示すものではない。また、恐らく最も重大な障害となる問題、しかもビットコイナーが些細なことと思っている問題がある。ビットコインが通常の商品やサービスに比べて価格が高いために、商品のBTC価格が小数点4桁以上になってしまう問題である。これは、日常の購買行動で価格を理解するだけで非常に困難が伴うこととなる。

C. 価値の保存
通貨が価値の保存として機能するには、通貨を使うときに購入したときと同じだけの経済的価値を受け取れることが必要になる。従来、価値の保存をするためは、通貨を物理的に隠すか銀行に預けて、盗難からの保護をしておけばよかったのだが、ビットコインは「ウォレット」と呼ばれる電子上のアカウントに所持しておく必要がある。そのため、ウォレットのセキュリティは重大な問題である。

ウォレットに安全に保管できたとしても、今度は価格のボラティリティによるリスクに直面する。下の図は2013年のBTC/USDの為替レートの変動割合を示している。比較のため、ユーロ、円、スイスフラン、英ポンドおよびロンドンの金価格(いずれもUSDに対する価格)の年換算した変動割合を示している。ビットコインの為替レートの変動割合は142%であり、その他の通貨は7~12%、金価格は22%であった。国際的によく取引される株式は20~30%の範囲であり、非常にリスクのある株式であっても100%を超えることは滅多にない。そのため、短期間であってもビットコインを保持することは極めてリスクが高いと言え、通貨の価値の保存という機能は全く果たしていないことが分かる。

ビットコインと主要通貨および金価格のボラティリティの比較
図1 ビットコインと主要通貨および金価格のボラティリティの比較

また、これらの価格について相関を算出したものが下表である。この表は、2010年7月(Gox取引所の取引開始)から現在までの日次データより作成した。表に示すように、欧州の3つの通貨は、ユーロ-スイスフランが0.61、ユーロ-英ポンドが0.64、英ポンド-スイスフランが0.42と高い正の相関を示ことが分かる。円や金は欧州の通貨同士よりは値は低いものの、他の法定通貨と正の相関が見られている一方で、ビットコインに対する相関係数はいずれもほとんどゼロである。

ビットコイン、法定通貨および金の為替レートの日変動に対する相関行列
表1 ビットコイン、法定通貨および金の為替レートの日変動に対する相関行列

したがって、ビットコインは法定通貨や金の価格から独立しており、法定通貨の価値に影響を及ぼす事象もビットコインにはプラス材料にもマイナス材料にもならず、ビットコインの変動リスクをヘッジすることも困難であると言える。

まとめ

ビットコインが投機的なものを超えて本物の通貨として定着するためには、日々の価格がより安定し、市場において価値が保存と価値の尺度が確実に機能する必要がある。ビットコインは日用品には桁数が多すぎること、ビットコイン決済できる販売店が少ないこと、セキュリティのための知識が必要なことが障害となっている。ビットコインのリスクをヘッジできる手段が未だ無く、また利用者間でトラブルになったときの法的整備も整っておらず、通貨として機能するための障壁は多い。

 

投稿者プロフィール

Baroque Street 編集部
Baroque Street 編集部
暗号通貨のシンクタンク。
アジア、ヨーロッパを中心に各種関連企業にヒアリングを行い、各国の法規制やトークンの設計、取引所の運営等を調査している。