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法定通貨は何が”法定”なのか

〜法規制から暗号通貨を考える② 〜

前回、暗号通貨と比較されることの多い電子マネーについて、法律の面からその位置付けを確認した。今回は同じく暗号通貨と比較されることの多い法定通貨に関して、その定義や運用などについて確認していく。

法定通貨は「強制通用力を有する通貨」と解釈できる

電子マネー同様、日本において法定通貨の明確な定義やオフィシャルな見解はない。一般的な理解としては、日本銀行の発行する日本銀行券(お札)と日本政府の発行する貨幣(硬貨)の二つが法定通貨ということになっている。

海外の事例を参照すると、イングランド中央銀行が発表している見解があるため、そちらを見てみたい。

What is legal tender ? −Legal tender has a very narrow and technical meaning, which relates to settling debts. It means that if you are in debt to someone then you can’t be sued for non-payment if you offer full payment of your debts in legal tender.

(Bank of England “Knowledge Bank”より引用)

後半部分の「債務の全てを法定通貨で返済すると言えば、取引の相手方から訴えられることはない」というのがポイントである。つまり、受け取りを拒否することのできない性質を持つ通貨のことを一般に法定通貨と呼んでいるようである。この性質は、しばしば強制通用力と表現されることも多いため、法定通貨は「強制通用力を有する通貨」と解釈することができる。

強制通用力の法的根拠

日本銀行法(462項)

前項の規定により日本銀行が発行する銀行券(以下「日本銀行券」という。)は、法貨として無制限に通用する。

この条文が日本銀行券の強制通用力の根拠となる。これの意味するところは、取引の相手方が日本円での支払いを拒否して、外貨や金銀などの現物での支払いを求めたとしても、日本においてはその要求を拒否し、円での受け取りを強要することができるということである。そして、その額に実質的な上限はないということも分かる。

通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律(第7条「放課としての通用限度」)

貨幣は、額面価格の20倍までを限り、法貨として通用する。

日本銀行券ではない貨幣(硬貨)に関しては「額面価格の20倍」つまり、同一硬貨であれば最大20枚までは取引の相手方に強制的に受け取らせることができる。逆に言えば、20枚を超えて同一の硬貨で支払いを行う場合は相手に受け取りを拒否されても文句は言えないということになる。

通貨に強制力を持たせることで信用と流動性が増す

上記条文のように、日本銀行券は「法貨として無制限に通用する」という極めて強力な表現によって守られている。紙幣のように実質的には無価値な法定通貨の信用力が高いのは「利用者が中央銀行を信頼しているから」というよりは、「利用者が居住国の法律の枠組みの中で生活しており、その範囲内において法定通貨は圧倒的な効力を発揮するから」に他ならない。つまり、現状の通貨への信用は国家の法律に対する信用、もっと言えば法律を解釈する専門家や法律を整備する官僚への信用と捉えることができる。

法定通貨が支払いに間違いなく使えると定められている一方で、他の支払い形態(前払式支払手段など)が限られたケースでしか使えないとなると、できるだけ法定通貨は使わずに手元に残しておきたいという発想になる。全員がそういう考え方になることで、法定通貨の信用度(手元に置く価値)は増し、結果として流通量が増え、流動性が増しているのである。

暗号通貨と法定通貨を比較する際、一覧表の中に必ずと言っていいほど「信用の根拠」といった項目があり、そこに「中央銀行」が登場するが、そもそも「中央銀行を信用して」通貨を使っている人はいないだろうし、その意味するところが非常に曖昧であった。そのため、本稿では法律的な解釈まで立ちもどり、法定通貨が流通し信用を得ている根拠について考察した。そして、上記の条文が改定されれば、いかに国民が中央銀行や政府を信頼しようとも、紙幣や硬貨は何の意味も持たなくなることが確認できた。

次回は、金融商品の法律的な枠組みについて考えていく。

投稿者プロフィール

Baroque Street 編集部
Baroque Street 編集部
暗号通貨のシンクタンク。
アジア、ヨーロッパを中心に各種関連企業にヒアリングを行い、各国の法規制やトークンの設計、取引所の運営等を調査している。