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金融商品取引法という大きな壁(前編)

〜法規制から暗号通貨を考える③ 〜

前回前々回とお金の貨幣的な側面(前払式支払手段・法定通貨)に着目し、その法律的枠組について見てきたが、今回は資産的な側面について確認していく。いわゆる株やFXといった資産運用手段の背景にはどういった法律があるのか。その復習という位置づけで読み進めていただければと思う。

「金融商品」の二つの解釈

金融商品取引法における金融商品とは一体何を指すのか。まずはその定義から見ていきたい。

金融商品に関する会計基準における解釈

企業会計基準委員会(ASBJ)が発表している金融商品に関する会計基準(https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/fv-kaiji.pdf)の中で、金融商品は金融資産(現金預金、受取手形、売掛金及び貸付金等の金銭債権、株式その他の出資証券及び公社債等の有価証券並びに先物取引、先渡取引、オプション取引、スワップ取引など)、金融負債(支払手形、買掛金、借入金及び社債等の金銭債務並びにデリバティブ取引により生じる正味の債務など)及びそれらを組み合わせたものとなっている。

金融商品取引法における解釈

金融商品取引法第二条24項に記載があったため、引用する。

24 この法律において「金融商品」とは、次に掲げるものをいう。

一 有価証券
二 預金契約に基づく債権その他の権利又は当該権利を表示する証券若しくは証書であつて政令で定めるもの(前号に掲げるものを除く。)
三 通貨
三の二 商品(商品先物取引法(昭和二十五年法律第二百三十九号)第二条第一項に規定する商品のうち、法令の規定に基づく当該商品の価格の安定に関する措置の有無その他当該商品の価格形成及び需給の状況を勘案し、当該商品に係る市場デリバティブ取引により当該商品の適切な価格形成が阻害されるおそれがなく、かつ、取引所金融商品市場において当該商品に係る市場デリバティブ取引が行われることが国民経済上有益であるものとして政令で定めるものをいう。以下同じ。)
四 前各号に掲げるもののほか、同一の種類のものが多数存在し、価格の変動が著しい資産であつて、当該資産に係るデリバティブ取引(デリバティブ取引に類似する取引を含む。)について投資者の保護を確保することが必要と認められるものとして政令で定めるもの(商品先物取引法第二条第一項に規定する商品を除く。)
五 第一号若しくは第二号に掲げるもの又は前号に掲げるもののうち内閣府令で定めるものについて、金融商品取引所が、市場デリバティブ取引を円滑化するため、利率、償還期限その他の条件を標準化して設定した標準物

前者の会計基準の方が、企業にとっての 金融資産もしくは金融負債 という見方であるのに対し、後者の金融商品取引法では、デリバティブ取引の原資産となり得るもの という見方となっている。すなわち、会計基準は企業にとっての税制面の取り扱いのルールブックとして金融商品を分類している一方で、金融商品取引法はリスク性商品からの消費者保護や資産としての取り扱いの明確化を目的として機能している。

今回は後者の金融商品に着目し、その法律的な扱いを確認していく。

金融商品取引業者は登録制である

まず、金融商品の売り手側のルールについて確認していく。日本において金融商品を取り扱う為には、政府らか金融商品取引業の登録を受けるか適格機関投資家等特例業務の届出を行うことが必要となる。
さらに、取り扱う金融商品の種類やその扱い方によって、区分が分かれる。

◎ 第一種金融商品取引業
◎ 第二種金融商品取引業
◎ 投資運用業
◎ 投資助言・代理業

第一種と第二種の違いは、主に販売する商品の内容であり、第一種が株や為替などであるのに対し、第二種はファンドや信託受益権等の販売にとどまる。
2018/3/31の金融庁のデータによると、登録社数は第一種金融商品取引業が294社、第二種金融商品取引業が1174社、投資助言・代理業が985社、投資運用業が370社となっている。(https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/kinyushohin.pdf)
ただし、注意しなければならないのは、複数の資格を持っている会社がある為、これを単純に足し合わせたものが、日本の金融商品取引業社の数とは必ずしも一致しないということである。

金融商品取引業者の禁止行為

金融商品取引業を行う業者あるいはその会社の役員は法律によって様々な制約を受ける。以下にFX業者である(株)マネーパートナーズの規約を引用し、その内容について確認する。

1)金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為
2)顧客に対し、不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤解させるおそれのあることを告げて金融商品取引契約の締結の勧誘をする行為
3)金融商品取引契約の締結の勧誘の要請をしていない顧客に対し、訪問し又は電話をかけて、金融商品取引契約の締結の勧誘をする行為
4)金融商品取引契約の締結につき、その勧誘に先立って、顧客に対し、その勧誘を受ける意思の有無を確認することをしないで勧誘をする行為
5)金融商品取引契約の締結の勧誘を受けた顧客が当該金融商品取引契約を締結しない旨の意思(当該勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、当該勧誘を継続する行為
6)契約締結前交付書面又は契約変更書面の交付に関し、あらかじめ、顧客に対して、金融商品取引法第37条の31項第1号から第7号までに掲げる事項について顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度による説明をすることなく、金融商品取引契約を締結する行為
7)金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、虚偽の表示をし、又は重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為
8)金融商品取引契約につき、顧客若しくはその指定した者に対し、特別の利益の提供を約し、又は顧客若しくは第三者に対し特別の利益を提供する行為(第三者をして特別の利益の提供を約させ、又はこれを提供させる行為を含む。)
9)金融商品取引契約の締結又は解約に関し、偽計を用い、又は暴行若しくは脅迫をする行為
10)金融商品取引契約に基づく金融商品取引行為を行うことその他の当該金融商品取引契約に基づく債務の全部又は一部の履行を拒否し、又は不当に遅延させる行為
11)金融商品取引契約に基づく顧客の計算に属する金銭、有価証券その他の財産又は委託証拠金その他の保証金を虚偽の相場を利用することその他不正の手段により取得する行為
12)金融商品取引契約の締結又は解約に関し、顧客に迷惑を覚えさせるような時間に電話又は訪問により勧誘する行為
13)金融商品取引契約の締結を勧誘する目的があることを顧客にあらかじめ明示しないで当該顧客を集めて当該金融商品取引契約の締結を勧誘する行為
14)金融商品取引契約の締結につき、顧客があらかじめ当該金融商品取引契約を締結しない旨の意思(当該金融商品取引契約の締結の勧誘を受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示したにもかかわらず、当該金融商品取引契約の締結の勧誘をする行為
15)あらかじめ顧客の同意を得ずに、当該顧客の計算により有価証券の売買その他の取引又はデリバティブ取引等をする行為
16)金融商品取引業者等の役員(役員が法人であるときは、その職務を行うべき社員を含む。)若しくは使用人が、自己の職務上の地位を利用して、顧客の有価証券の売買その他の取引等に係る注文の動向その他職務上知り得た特別の情報に基づいて、又は専ら投機的利益の追求を目的として有価証券の売買その他の取引等をする行為
17)デリバティブ取引又はこの受託等につき、顧客から資金総額について同意を得た上で、売買の別、銘柄、数及び価格(デリバティブ取引にあっては、これらに相当する事項)のうち同意が得られないものについては、一定の事実が発生した場合に電子計算機による処理その他のあらかじめ定められた方式に従った処理により決定され、金融商品取引業者等がこれらに従って、取引を執行することを内容とする契約を書面によらないで締結する行為(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により締結するものを除く。)
18)店頭金融先物取引の受託等につき、顧客に対し、当該顧客が行う店頭金融先物取引の売付け又は買付けその他これに準ずる取引と対当する取引(これらの取引から生じ得る損失を減少させる取引をいう。)の勧誘その他これに類似する行為をすること
19)デリバティブ取引につき、当該デリバティブ取引について顧客に損失が生ずることとなり、又はあらかじめ定めた額の利益が生じないこととなった場合には自己又は第三者がその全部又は一部を補てんし、又は補足するため当該顧客又は第三者に財産上の利益を提供する旨を、当該顧客又はその指定した者に対し、申し込み、若しくは約束し、又は第三者に申し込ませ、若しくは約束させる行為
20)デリバティブ取引につき、自己又は第三者が当該デリバティブ取引について生じた顧客の損失の全部若しくは一部を補てんし、又はこれらについて生じた顧客の利益に追加するため当該顧客又は第三者に財産上の利益を提供する旨を、当該顧客又はその指定した者に対し、申し込み、若しくは約束し、又は第三者に申し込ませ、若しくは約束させる行為
21)デリバティブ取引につき、当該デリバティブ取引について生じた顧客の損失の全部若しくは一部を補てんし、又はこれらについて生じた顧客の利益に追加するため当該顧客又は第三者に対し、財産上の利益を提供し、又は第三者に提供させる行為
22)通貨関連デリバティブ取引につき、顧客が預託する証拠金額(計算上の損益を含みます。)が金融庁長官が定める額(平成2281日以降は想定元本の2%、平成2381日以降は同じく4%。以下同じ。)に不足する場合に、取引成立後直ちに当該顧客にその不足額を預託させることなく当該取引を継続すること
23)通貨関連デリバティブ取引につき、営業日ごとの一定の時刻における顧客が預託した証拠金額(計算上の損益を含みます。)が金融庁長官が定める額に不足する場合に、当該顧客にその不足額を預託させることなく取引を継続すること
24)顧客にとって不利なスリッページが発生する場合(注文時の価格より約定価格の方が顧客にとって不利な場合)には、顧客にとって不利な価格で取引を成立させる一方、顧客にとって有利なスリッページが発生する場合(注文時の価格より約定価格の方が顧客にとって有利な場合)にも、顧客にとって不利な価格で取引を成立させること
25)顧客にとって不利な価格で取引を成立させるスリッページの範囲を、顧客にとって有利な価格で取引を成立させるスリッページの範囲よりも広く設定すること(顧客がスリッページを指定できる場合に、顧客にとって不利な価格で取引を成立させるスリッページの範囲が、顧客にとって有利な価格で取引を成立させるスリッページの範囲よりも広くなるよう設定しておくことを含む。)
26)顧客にとって不利なスリッページが発生する場合に成立させる取引額の上限を、顧客にとって有利なスリッページが発生する場合に成立させる取引額の上限よりも大きく設定すること

(2018/5/4時点のマネーパートナーズHP「金融商品取引業者に係わる禁止行為」より抜粋)

詳細は上記のとおりであるが、勧誘の方法やポジションの取り扱い等について事細かに制限がなされ、消費者が過度に不利な状況に立たされることのないようになっていることが分かる。

金融商品購入者(顧客)の禁止行為

金融商品の買い手側、すなわち消費者側にも禁止行為が存在する。同じく(株)マネーパートナーズの規約を引用し、その内容について確認する。

1)金融商品取引業者等又は第三者との間で、上記(19)の約束をし、又は第三者に当該約束をさせる行為(当該約束が自己がし、又は第三者にさせた要求による場合に限る。)
2)金融商品取引業者等又は第三者との間で、上記(20)の約束をし、又は第三者に当該約束をさせる行為(当該約束が自己がし、又は第三者にさせた要求による場合に限る。)
3)金融商品取引業者等又は第三者から、上記(21)の提供に係る財産上の利益を受け、又は第三者に当該財産上の利益を受けさせる行為(前2号の約束による場合であって当該約束が自己がし、又は第三者にさせた要求によるとき及び当該財産上の利益の提供が自己がし、又は第三者にさせた要求による場合に限る。)

(2018/5/4時点のマネーパートナーズHP「金融商品取引業者に係わる禁止行為」より抜粋)

デリバティブ取引における損失の補填や利益の配分などを確約させることを禁止している内容となっている。また、ここでは触れられていないが、株取引においてはインサイダー取引等も当然規制の対象となってくる。

本稿は法律の専門的な解釈を目的とするものではないため、金融商品の規制に関して一部を切り出すのみの形となったが、ここまで確認してきただけでも、金融商品取引業者になって営業を継続していくには相当なハードルがあることがお分かりいただけたであろう。
一方で、暗号通貨取引に関わる業者は金融商品取引法において規制されないため、いわばノールール状態であった。それが何を意味するのかは、次回詳しく考えていきたい。

投稿者プロフィール

Baroque Street 編集部
Baroque Street 編集部
暗号通貨のシンクタンク。
アジア、ヨーロッパを中心に各種関連企業にヒアリングを行い、各国の法規制やトークンの設計、取引所の運営等を調査している。